ラリーが崩れたとき
パスやディグがセッターの位置に届かないと、チームは予定していたプレーを展開できません。この状態をアウトオブシステムと呼びます。対処法は、チーム全員ですばやく判断をそろえることです。だれかが2本目を取ると声をかけ、サイド(レフトかライト)へ高く打ちやすいトスを上げます。だれもアタックできないときは、コントロールしたフリーボールを相手コートへ返して守りに備えます。
- アウトオブシステム
- 1本目がセッターのターゲットに届かなかった状態
- 最初の仕事
- 早めに声をかける:2本目はだれが取る?
- ふつうの選択
- アウトサイドヒッターかライト側のアタッカーへの高いトス
- アタックできないとき
- 高く深いフリーボールを返し、守りに入る
ルール 記載したルールブックで定められていること。 チームの約束事 このチームが選んだやり方。ほかのチームは別のやり方を選ぶこともあります。 練習のポイント 練習用に簡単にした指示。
わかりやすく言うと:インシステムとアウトオブシステム
1本目(パスやディグ)がネット近くのセッターのターゲットに届いているとき、チームはインシステムです。セッターは速いミドルの攻撃も含めて、どのアタッカーでも選べます。1本目がほかの場所へ行ったとき、チームはアウトオブシステムです。ネットから遠すぎる、セッター自身に行ってしまった(セッターはそのボールを続けてトスできません)、あるいはだれもそこから攻撃できない場所に行った、といった場合です。選択肢が減るので、チームはよりシンプルで安全な選択に切り替えます。ルール上は何も「間違って」いません。チームには新しいプランが、すぐに必要になるだけです。
チームの約束事: 以下の例では5-1のチーム(セッター1人、オポジット、アウトサイドヒッター2人、ミドルブロッカー2人、リベロ。5-1フォーメーションを参照)を使います。だれがセッターの代わりを務めるか、どんな言葉で声をかけるか、高いトスをどこへ上げるかは、このチームの決めごとです。あなたのチームは別の決め方をしてもかまいません。
このチームが使う声かけ
短く大きな声かけがあれば、全員が同時に反応できます。ここに挙げるのは一例です。大切なのは、チーム全員が同じ言葉を使うことです。
- 「お願い!」 — セッター(またはトスを上げる予定の選手)が2本目を取れません。ほかのだれかがトスを上げなければなりません。
- 「オーライ!」 — このボールは自分が取ります。ほかの全員はよけて、次のタッチに備えます。
- 「高く!」 — アタッカーが高いトスを求める声です。セッターにわかりやすい目標を与えます。
- 「返す!」 — アタックせずに、いまボールを相手コートへ返します。全員が守りに備えます。(易しいボールを受ける側のチームは「フリー!」とコールします。)
場面1:セッターが1本目を取る
最初の問題:相手がブロックの上をこえるロールショットを、味方のセッターが守っているライトバックへ落とします。セッターがディグするしかありませんが、同じ選手が続けて2回ボールに触れることはできないので、セッターはそのままトスを上げられません。
チームの約束事: 判断:このチームでは、セッターが1本目を取ったら、セッターが「お願い!」と声をかけ、リベロが2本目を取ります。リベロが間に合わないときは、オポジット(ライト側のアタッカー)が取ります。トスはレフトのアウトサイドヒッターへ高く上げます。いちばんタイミングを合わせやすいアタックだからです。
ディフェンス中の5-1のチームの例で、味方のコートが下です。味方のセッター(S)はライトバックで守っています。相手は自分たちのレフト側から攻撃しようとしています。
S=セッター、OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OPP=オポジット、L=リベロ(黄色)。オレンジ=相手チーム。吹き出しは声かけの例です。
- 相手のアウトサイドヒッターが、味方のブロックの上をこえるボールを、セッターのいるライトバックへ落とします。セッターが1本目を取らなければなりません。
- セッターはボールをコート中央へ高くディグし、「お願い!」と声をかけます。1本目を使ったので、ほかのだれかがトスを上げなければなりません。
- チームの決めごと:2本目はリベロが取ります。リベロはアタックラインの後ろでボールの下に入り、「オーライ!」と声をかけます。アウトサイドヒッターは外側へ大きく開き、セッターとほかの選手はカバーの位置へ動きます。
- リベロはレフトのアウトサイドヒッターへ、オーバーハンドで高いトスを上げます。アタックラインの後ろからのトスなので、アタッカーはネットより高い位置でアタックしてかまいません。
- アウトサイドヒッターがアタックします。セッターも含めたほかの全員が、ブロックに当たって返ってくるボールに備えて、アタッカーのまわりに近づいてカバーします。
- 次のフェーズ:ボールは相手コートにあるので、チームはディフェンスのベースへ戻ります。セッターはライトバックへ戻り、次のトスに備えます。
結果:セッターのディグはコート中央へ高く上がり、リベロがアタックラインの後ろからトスを上げ、アウトサイドヒッターは打ちやすいボールを得ます。残りのチーム(セッターも含む)はアタッカーをカバーします。ボールが相手コートへ渡ったら全員がディフェンスに戻り、セッターは次のトスに備えます。
注目するポイント
- ディグは高く、コート中央へ上げます。そうすれば代わりにトスを上げる選手が間に合う時間ができます。
- セッターはボールに触れながら声をかけるので、リベロは待たずに早く動き出せます。
- セッターは2本目を追いかけません。カバーに加わり、そのあと自分のディフェンスの位置に戻ります。
ルール: 同じ選手は続けて2回ボールに触れることはできません(ブロックは除く)。リベロがフロントゾーン(ネットとアタックラインの間)で指を使ったオーバーハンドパスでトスを上げた場合、ボール全体がネット上端より高い位置にある間は、味方はそのボールのアタックを完了できません。アタックラインの後ろからのリベロのトスなら、自由にアタックできます。だからこの例のリベロはラインの後ろからトスを上げています。ラインより前に出なければならないときは、アンダーハンド(前腕)のトスならアタックは正当です。 (FIVB 2025–2028、ルール9.1.1、19.3.1.4、13.3.6)
場面2:パスがネットから大きく離れる
最初の問題:チームはサーブをレシーブしています。サーブが打たれたあと、セッターはターゲットへ走り、ミドルブロッカーはクイックの助走を始めました。ところがパスはターゲットから遠く離れた、コート中央のアタックラインのすぐ後ろに落ちていきます。
チームの約束事: 判断:セッターはまだボールに届くので、「オーライ!」と声をかけてボールへ向かいます。予定していたクイックはやめます。ミドルはカバーに入り、アウトサイドヒッターは外側へ大きく開いて「高く!」と声をかけます。セッターはレフトへ高いトスを上げます。
サーブをレシーブする5-1のチームの例で、味方のコートが下です。サーブが打たれたあとは全員が動けます。セッターはターゲットへ走り、ミドルブロッカーはクイックの助走を始めています。
S=セッター、OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OPP=オポジット、L=リベロ(黄色)、SV=サーバー。オレンジ=相手チーム。吹き出しは声かけの例です。
- サーブは左のアウトサイドヒッターへ向かいます。
- パスは上がりますが、ターゲットから遠く離れた、コート中央のアタックラインのすぐ後ろに落ちていきます。
- セッターはまだ届くので、「オーライ!」と声をかけてボールへ走ります。クイックはもう合わないので、ミドルは止まってカバーに入ります。アウトサイドヒッターは外側へ大きく開き、高いトスを呼びます。
- セッターはレフトへ高いトスを上げます。高さがあるのでアタッカーは助走する時間を得ますが、相手にも2枚ブロックをそろえる時間を与えます。
- アタッカーはブロックに正面から打ち込まず、ブロックを避けて空いているコートへ打ちます。仲間はアタッカーのまわりに寄ってカバーします。
- 次のフェーズ:チームはディフェンスのベースへ戻り、セッターはライトバックへ戻ります。
結果:アタッカーは助走する時間のある高いトスを得ます。相手にも2枚ブロックをそろえる時間ができるので、アタッカーはブロックに正面から打ち込むのではなく、ブロックを避けて空いているコートをねらいます。仲間はカバーし、そのあとディフェンスのベースへ戻ります。
このパスにクイックが合わなくなる理由
クイックのトスは、ターゲットからすでに跳んでいるアタッカーへ、短く速い軌道で上がります。ネットから遠い位置から同じトスを上げようとすると、セッターが走りながら逆を向いた状態で、ずっと長い距離を速く送らなければなりません。タイミングはほとんど合わず、タイミングの合わないクイックは相手に簡単な得点を与えます。高いトスは遅くなりますが、アタッカーが合わせることができます。
注目するポイント
- まずセッターが判断します:自分は届くか?届かなければ「お願い!」と声をかけ、場面1の代わりの選手が取ります。
- アウトサイドヒッターは外側へ大きく開いてボールを呼ぶことで、トスの目標を大きくします。
- ミドルはあきらめません。このアタックのカバーに回ります。
場面3:コントロールしたアタックができない
最初の問題:クロスへの強打をディグしたものの、ディグがネットから離れて味方コートの左奥のコーナーへ飛んでいきます。セッターは前衛で、ブロックに跳んだ直後なので間に合いません。
チームの約束事: 判断:セッターは「お願い!」と声をかけます。リベロはボールに届きますが、ネットから離れる方向へ動いていて、そこからではどのアタッカーもトスに合わせて助走できません。無理なトスや強引なスイングをする代わりに、リベロは高く深いアンダーハンドパスを相手のバックコート中央へ送り、「返す!」と声をかけます。
ディフェンス中の5-1のチームの例で、味方のコートが下です。今回はセッターが前衛にいて、ミドルと一緒にブロックします。
S=セッター、OH=アウトサイドヒッター、MB=ミドルブロッカー、OPP=オポジット、L=リベロ(黄色)。オレンジ=相手チーム。吹き出しは声かけの例です。
- 相手のアウトサイドヒッターが、味方のブロックの横を抜けるクロスへ強打します。味方のレフトバックがディグします。
- ディグは上がりますが、ネットとセッターから離れて、味方コートの左奥のコーナーへ飛んでいきます。
- セッターはブロックのあとネットにいて届かないので、「お願い!」と声をかけます。リベロは追いつきますが、ネットから離れる方向へ動いていて、ここからではどのアタッカーにもトスを上げられません。コントロールしたアタックはできません。
- リベロは相手のバックコート中央へ高く深いアンダーハンドパスを送り、「返す!」と声をかけます。相手は「フリー!」とコールするでしょう。タッチは2回でかまいません。ルールで決まっているのは最大3回までで、最低回数はありません。
- 全員がディフェンスへ移ります。前衛はブロックのためにネットへ、後衛は自分のベースへ。相手は易しいボールからフルの攻撃をしてくるので、トスが上がる前に陣形を整えましょう。
結果:相手は易しいボールを受けて、おそらくフルの攻撃を仕掛けてくるので、チームはすぐにディフェンスに入ります。前衛はブロックのためにネットへ、後衛は自分のベースポジションへ。相手がトスを上げる前に陣形を整えることは、リスクの高いアタック1本よりも価値があります。
注目するポイント
- 相手のバックコート中央への深いボールは、短いボールや低いボールより速い攻撃につなげにくくなります。
- 「返す!」の声で、ボールがネットをこえる前に全員がディフェンスへ切り替えます。
- チームは2回のタッチを使いました。3回まで使えますが、3回使う必要はありません。
ルール: チームはボールを返すのに最大3回まで触れることができ(ブロックは除く)、1回目、2回目、3回目のどれで相手コートへ返してもかまいません。相手へ向けて送るボールは(サーブとブロックを除き)すべてアタックヒットとみなされ、リベロはボール全体がネット上端より高い位置にあるときにアタックヒットを完了できません。この例のように、ネットより低い位置でのアンダーハンドパスは正当です。 (FIVB 2025–2028、ルール9.1、13.1.1、19.3.1.2)
練習のポイント: 安全にプレーできるボールだけを追いましょう。ボールが壁、ベンチ、テーブル、ほかの選手のほうへ飛んでいくなら、追わずに見送ります。1点のためにけがをする価値はありません。
初心者・一般プレーヤー向け
チームにまだ決まった役割がない場合(たとえば6-6や4-2のチームや、その場で集まったゲームなど)でも、3つのシンプルな習慣で同じ考え方が使えます。
- 2本目では毎回声を出す。1本目を自分が触ったら「お願い!」と言い、仲間に任せることを伝えます。いちばん近いほかの選手が「オーライ!」と声をかけて取ります。
- 迷ったら高く上げる。ネット近くで、コートの少し内側へ、打つ準備ができている選手に向けて高くトスを上げます。高さが全員に時間を与えます。
- だれもアタックできないときは、高く深く返す。そのあと守りに備えます。コントロールしたフリーボールは失敗ではなく、良い判断です。
練習のアイデア
練習のポイント: コーチやパートナーが、パッサーをターゲットから引き離すボールを投げたり打ったりします。セッターへ、深くへ、横へとさまざまです。各ボールをプレーする前に、チームは正しい声かけ(「お願い!」「オーライ!」「高く!」「返す!」)をしなければなりません。つながったボールの数だけでなく、良い判断の数を数えましょう。フリーボールからの切り替え練習や6対6ウォッシュの練習に取り入れるのがおすすめです。
深掘り:代わりのセッターの選び方と高いトスの打ち方
だれがセッターの代わりをするべき?
チームによって代わりの選手はさまざまです。リベロはボール扱いが安定していることが多く、常に後衛にいますが、上で説明したフロントゾーンのルールにより、ネット近くでのオーバーハンドのトスには制限があります。オポジット(ライト)はふつうネットの近くにいて、どこからでもオーバーハンドでトスを上げられますが、その場合はそのボールのアタッカーにはなれません。「1本目を取らなかったいちばん近い選手」と決めているチームもあります。どれもチームの決めごとです。大切なのは、ラリーが始まる前に全員がそれを知っていることです。
高いトスをサイドへ上げる理由
レフト(アウトサイド)やライトのアンテナ付近へのトスなら、アタッカーは最も長い助走と広い打つ角度を得られます。ネットから遠い位置からの高いトスは、中央をねらうよりサイドライン方向をねらうほうが簡単です。中央へのトスはミスするとネットにかかったり、相手コートへ流れたりしやすいからです。
そろったブロックに対して高いトスを打つ
高いトスは相手にブロックを整える時間を与えるので、アタッカーの仕事は「強く打つ」から「賢く打つ」に変わります。ブロックを避けてねらう、ブロッカーの手に当てて外へ出す、あるいはコントロールしたショットを空いているコートへ落とします。打ち分けの選択肢はアタックを、ネットから離れた位置からのトスの上げ方はトス(セッティング)を参照してください。
カバーと次のフェーズ
上のどの場面も同じように終わります。ボールがネットをこえたら、チームはディフェンスのベースへ移ります。自チームのアタッカーをカバーすること(アタックカバー)と相手のアタックを守ることは別のフェーズです。守備システムのページで両者を比べています。
このページのルールは2026年10月5日に次の資料で確認しました: FIVBオフィシャル・バレーボール・ルール2025–2028。
よくある質問
バレーボールのアウトオブシステムとは何ですか?
1本目(パスやディグ)がネット近くのセッターのターゲットに届かず、予定していた攻撃を展開できない状態を、アウトオブシステムといいます。ふつうはよりシンプルなプレーで対応し、多くの場合はアウトサイドヒッターかライト側のアタッカーへ高いトスを上げます。
セッターが1本目を取ったら、だれがトスを上げますか?
チームで決めておいた選手です。多くのチームは、リベロかオポジット(ライト側のアタッカー)を代わりのセッターにしています。セッターが「お願い!」などと声をかけ、代わりの選手が2本目を取るとわかるようにします。これはチームの決めごとで、ルールではありません。
リベロはアタックのためのトスを上げられますか?
はい。FIVBルールでは、リベロがアタックラインの後ろからトスを上げれば、味方はそのボールを自由にアタックできます。リベロがフロントゾーンで指を使ったオーバーハンドパスを使った場合、ボール全体がネット上端より高い位置にある間はアタックできないので、そこではアンダーハンドのトスのほうが安全です。
パスが乱れたら、なぜ高いトスを上げるべきなのですか?
ネットから遠いパスからでは、速いトスはタイミングもねらいも合わせにくくなります。サイドへの高いトスなら、相手にもブロックの時間を与えてしまうものの、アタッカーは助走を合わせる時間があり、ミスのリスクも下がります。
バレーボールでは3回のタッチをすべて使わなければなりませんか?
いいえ。チームはボールを返すのに最大3回まで触れることができますが(ブロックは除く)、どのタッチで相手コートへ返してもかまいません。コントロールしたアタックができないときは、高く深いフリーボールを返してすばやくディフェンスに切り替えるのが、多くの場合いちばん良い選択です。